高騰が続くコメ価格の引き下げに向け、政府は頼みの綱である備蓄米の売り渡し方法を模索している。小泉進次郎農林水産相は23日の閣議後会見で、6月頭に2000円台で備蓄米が店頭に並ぶよう、取り組みを進める方針を示した。これまでの放出分のうち小売業者まで届いたのは1割に満たず、目詰まりは明らかで、随意契約など新方式の導入で打開を目指す。即効性が焦点になる。
競争入札の結果「高止まり」か
備蓄米の入札は3月から3回実施され、計約31万トンが落札された。このうち3月入札分の約21万トンが集荷業者に引き渡されたが、その先の卸売業者には約5万5千トン、末端の小売業者への放出分は約1万5千トンまで落ち込む(4月27日現在)。引き渡し全体の7%だ。
現行は大手集荷業者を対象にした一般競争入札で、備蓄米は放出されている。低い価格ではなく高い価格を提示した業者が順に落札していくため「川下」のスーパーなどの小売店頭価格が高止まりになるとされている。また、全国農業協同組合連合会(JA全農)が9割超を落札していて、JA全農と従前から取引のある卸売業者にのみ備蓄米が渡っているとの見方もある。
価格抑制や迅速な契約に期待
小泉氏は、この一般競争入札が「弊害」だとみて、随意契約への転換を明言した。国が価格などの条件をあらかじめ決めて任意に受注者を選べるため、売り出し価格の抑制や迅速な契約が期待できる。流通にも介入できるので目詰まり解消も見込める。
ただ、すでに「課題」も浮かんでいる。
農水省関係者によると、どの業種が契約対象となるかは未定だ。政府は備蓄米を小売業者に直接届けることを検討しているが、「配送ルート」を確保できるのかは懸念材料だ。また、多くの小売業者には精米設備がなく、玄米のまま仕入れた備蓄米の取り扱いも困難だ。
宇都宮大の小川真如助教(農業経済学)は、価格低下に向けた随意契約の有効性を認めた上で、「流通経路などを農水省側が一つ一つ確認していくことになり、業務量は膨大になる」と指摘。「恣意的な運用にならないよう公平性を担保する必要もあり、難易度は高い」としている。(中村翔樹)
日本経済新聞 2025/5/23 23:08
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